本棚の整理を謳歌する

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中野を謳歌 第01回 本棚の整理を謳歌する。

このブログはフィクションであり、筆者の妄想と夢で出来ている。真に受けたことによる一切の責任は負いかねるので悪しからず。

 

 

不安である。

ブログを開設し、数日。過去に見えていたはずの理想はただの蜃気楼だったと気づく。

ユーモアというのは非常に難しいものだった。山の天気のように形勢が変わる。

昨日は面白いと思った渾身の一発ギャグも、今日見返すと途端に強烈な加齢臭を放つ親父ギャグに成り下がっている。

 

一旦ユーモアのことは棚にあげよう。そう思って本棚を見ると、本棚は満室だった。

しかし隙間が無いわけではない。むしろ隙間は多数ある。

 

なぜ空き部屋がないのか。それは私のちっぽけなこだわりのせいであった。シリーズや出版社、作者ごとに綺麗にまとめたいし、漫画の部屋に文庫本は置きたくないのだ。

しかし、そんなことを言っていたら、この散らかった部屋に”汚”という不名誉な一文字が加えられるのは時間の問題である。というより、もう汚部屋のようなものである。

 

ここまで考えて、私は思った。

 

そんなことでいいのか? それならば、お前のちっぽけなプライドを壁に敷き詰めて不安定になった本棚に押しつぶされても文句は言うまいな、と。

 

たとえ私がプライドに押しつぶされても、責任転嫁をすることなど断じてない……とは言い切れないどころか、閻魔様の前では舌の安全管理上、口が裂けても言えない。

 

こうして私は本棚の整理を始めることにしたのだ。

 

引っ越したいねと虚空に向かってつぶやき続けてもう数年、全く引っ越す予定はないが、引っ越す準備くらいはしておいても罰は当たらないだろう。

 

手始めに、数日前に通販サイトで注文したスピーカーを梱包していた定員乳幼児1名ほどのダンボールへ、この日本のどこかに私と出会うのを待っている新居に持っていく本を詰めることにした。

 

本棚から本を出して、箱に入れる。

本棚から本を出して、パラパラめくる。

本棚から本を出して、そのまま座る。

本棚から本を出さずに、本を読む。

ハッと我に返り、本棚に戻す。

本棚から本を出して、これはいらぬと戻す。

本棚から本を出して、箱に入れる。

本棚から本を出したが、読んだ記憶がない。

本棚から本を……

 

そんなこんなで一時間は経っただろうか。

ダンボールはいっぱいになったものの、本棚は未だ満室であった。もともと定員オーバーであったのが、定められた量に戻っただけであった。

 

私は何をしていたのだろう。そんな気持ちが私の胸をいっぱいにした。さらに紙が湿気を吸ったせいで眼球がカサカサ。瞬きの数もモールス信号並みである。

 

眼球のSOSを受信した私は、とりあえず散漫な部屋の事を一旦枕元に置いておいて、ふて寝をすることにした。

 

数時間が経ったのだろうか、部屋に差し込む日の光も茜色が混じってきた頃。

 

目が覚めて冴え始めてきた私の思考回路に反して、部屋は睡眠前より汚くなっていた。犯人は分かっている。私の寝相である。幼少期に家の最奥に敷かれた薄い布団で眠り、その対角線上の部屋で目覚めたことのある私は、全自動で睡眠時に部屋を汚くする迷惑なルンバをその無意識に飼っているのだ。一生かけても飼いならせそうにないのが残念でならないが。

 

散らかった部屋で大の字で寝転びながら私は思った。

 

本棚を買おう、と。

 

それから数カ月が経ち、ダンボールに詰め込まれた本たちは次第に家中に散らばり、今日も今日とて本棚はギュウギュウであった。

 

新しい本棚は、引っ越すときに買う予定となったのだ……

 

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