万年筆はロマンである。(カクノ前編)
この企画は、デジタル化が進む現代においての文房具のあり方について考え、社会的な視点で文房具好きが語る……というものではなく、私が使って「これは誰かにオススメしたいぞ!」と思った文房具を独自の視点という名の愛と偏見で皆様を文房具店へと誘うという企画である。
唐突だが、私は元気だ。
元気と言っても外を駆け回る少年のような快活さではなく、好きなアーティストが朝のニュース番組で特集されていたときの発狂に近いものである。
その元気の源となったのは毎日一杯の青汁ではない。万年筆だった。
万年筆といえば、高そうな金色のペン先と、スーツを着た年配の男性、そんなイメージを持っていた。狭苦しい穴の中で一人、pcいじりやゲームに勤しむ私にとって、万年筆は程遠い存在であると認識していた。
そして、万年筆は高い。
平気で福沢諭吉先生を人質にするくらいの高価さである。このネタも後数年で使えないということを理解している。次は渋沢栄一氏が新一万円札の肖像に使われるらしいが、キャッシュレス化がゆるやかに進行している現在、肖像画ネタというのがこれからどれだけ面白いのかについての考察は別のセンスのある人に任せる。
今は100円のボールペンでも満足度が非常に高く、かくいう私もuniのユニボールシグノには大変お世話になっている。
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さらに、デジタル化の勢いはとてつもない。一昔前なら電卓で計算していた物も、表計算ソフトの活躍によって作業は数段楽になっている。そろばんをカバンから取り出して検算してみるのも一興だが、そんな姿を後輩に見られたときには不遇なレッテルを貼られること請け合いなので注意しておきたい。
そんな中、わざわざ苦楽をともにしてきた福沢先生(2019年現在)をそうやすやすと万年筆に明け渡すには少しばかり勇気が足りない。
そういった心持ちを変えてくれたのが1000円という、万年筆では格安とも言える部類の商品である”カクノ”だったのだ。
私は様々な文房具店に足を運ぶたびに、その安さとペン先に刻印された愛らしくも憎たらしくも思える笑顔にかどわかされ、中字と細字の二本を手元に残す結果となってしまった。
大別して万年筆の太さには7種類あり、私が購入した当時のカクノは中字(M)と細字(F)の二種類が存在した。その後、極細(EF)という種類も追加され、透明軸と呼ばれるペンの胴体が透明でインクがよく映えるものも発売された。
突然だが、私はスケスケが大好きである。ps2,4のコントローラーは内部構造が丸見えのスケルトンタイプを使っているし、女性を包む濡れたシャツは無条件で親指が反り上がってしまう。
そんなスケスケ愛好家の私が、透明軸の発売を黙って見過ごすわけには行かなかった。
そんなこんなで私の部屋にはカクノが三本ある。なんなら一本は布教用にしたいまである。
しかし、私には万年筆を布教するような友人など皆無なのだ。というか、そもそも知り合いが少ないのだ。ブログで万年筆について語るような奴と友達になろうという物好きはそういない。
閑話休題。
私は初めに細字を買ったが、当時はどうにも書き味のカリカリ感に違和感を感じ、2本目は中字を買った。
しかし、中字の方は少しインクの出(インクフローというらしい。なんかかっこ良い)が良すぎて文字が滲んでしまったりすることもあって最近は主に細字の方を使っている。
補足すると、安価な万年筆は鉄ペンと呼ばれる物が多く、ペン先が高価なものよりも硬くて長く使わないと使用者の好みの書き味にならないので、購入直後はどうしてもカリカリしてしまう。
逆に高価なものはペン先に金が使われていることが多く、金は鉄等に比べて柔らかい金属であるため、カリカリ感は少ないらしい。
だがこの金ペンというヤツ、私は使ったことがないのであくまで聞いた話である。
当時そんなことを知らなかった私は「万年筆書きにくい!」などと愚痴った。心の中で。しかし、今ではいい書き味になっているので特に不満はない。
さらにもう一つ、万年筆の強みがある。
それは左利きに優しいということである。
右利きの方にはあんまり関係のない話だが、文字は左から右へと向かう筆跡が多く、左利きの書き方だとボールペンの仕組み上、文字がかすれてしまうことが大いにある。
さらに右利きの場合であってもペンを寝かせ気味で文字を書く人は同じ症状が出やすい。
しかし万年筆は毛細管現象を利用して筆記するので、文字のかすれが発生しにくいのだ。
毛細管現象とは
管が細ければ細いほど、表面張力で持ち上がる水の量が増える現象。
ザックリ言うと表面張力(水面が盛り上がる時の力)に関係したもの。
それだけでも左利きにとっては万年筆を買う理由に十分なりえるだろう。さらに、万年筆は筆記するのに筆圧をほとんど必要としないため、筆圧が少なくてお困り方には最高の筆記具となるだろう。
さて、万年筆を使う体裁は整った。
まだカクノを腰に差していないサムライ殿は今すぐ文房具店に駆け込むか、ネット通販でポチると良い。
今回は、カクノの記事というより、ほぼほぼ万年筆についての基本知識、というよりも私が持っている最低限度の知識の上澄みをろ過したものをお届けさせていただいた。
次回は上澄み一番搾りくらいの濃度の情報を提供できればと思っている。
そうは言ったが、私の持てる能力を最大限に発揮し、記事を読んでくださる皆々様に満足していただけるような文章を書けるように日々邁進する所存である。
ぜひとも、次回の記事も閲覧していただけると嬉しい限りである。
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