我々はなにゆえあの脂肪の塊にうつつをぬかすのか【恋文の技術_感想】

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読書感想文2000 第三回 恋文の技術

カテゴリ【小説】

タイトル【恋文の技術(森見登美彦)】

評  価【健全なる精神は、健全なるおっぱいに宿るで賞】

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〈概要〉

京都の大学院から、研究のためという名目で遠方の研究所へ飛ばされた男が一人。

 

彼はクラゲと厳しい先輩だけしかない僻地での寂しさを埋めるため、恋に悩む友人や、意地悪ばかりする女帝、家庭教師のお姉さんに恋する少年、不意に本質を突いてくる鋭い妹に、有名作家の森見登美彦というたくさんの人々と文通修行に励む。

 

恋文代筆のベンチャー企業を作ろうという目論見が生まれるほどの文通長者になった男にも、手紙が送れない女性が一人いて……

 

彼らの送った手紙から読み解く、恋心と単位の行方やいかに!!

 

〈感想〉

またまた森見登美彦さんの本の感想を書きます。

 

手紙をのぞき見する形式の小説、書簡集という形もありますが、私はこの形の小説を読むのが初めてだったので、とても新鮮な気持ちで楽しむことが出来ました。

 

本に描かれている多くの手紙の送り主である、遠方の研究所でマンドリンの音色に包まれながらクラゲを眺める守田一郎。彼のペンにはジェット推進でも付いているのかというくらいの速さで手紙をあちこちにばらまきます。現代では手紙などを送ることも少なくなって、もっぱらtwitterだのgmailだのを使って連絡を取り合いますが、手紙というアナログの手段の中にしかない面白さや楽しさというものをこの本では覗き見ることが出来ます。しかし、気になっていたあの人に連絡を取ってみるか……という気持ちにはなりません。そういった教訓めいたものなど一切ありません。

 

この作品のなかで特に楽しめる部分というと、やっぱり読み進めるにつれつながってくる彼らの人間関係でしょう。

 

ここで詳しく書いてしまうと読む楽しみを失ってしまいますが、恋愛には多角形がつきものです。徐々に「あれ? こう書かれているこの人ってあの人なんじゃないか?」という手紙で彼らの関係性がつながった時にフフッと笑みがこぼれてしまいます。

 

さらに、この小説には作者本人が登場してしまうのです。面白いのは、別の作品を読んでいると出てくる内容がちらほら出てくるのです。特に、夜は短し歩けよ乙女の内容がたくさんあったように思います。他の本で読んだ内容がふらっと出てくると楽しいです。

 

そして後半の恋文失敗集は青臭い男のどうやっても届かない恋心が見え隠れ、というより見え見えしてしまう場面では笑いがこみ上げてきてしまいます。

 

恋文を送ったことはないにせよ、恋をしたことのある男なら誰でも分かってしまうような気持ち悪さが身近で面白かったです。

 

恐ろしい女帝、大塚さんとの熱い頭脳バトルは爆笑必至です。電車内で笑ったら白い目で見られました。どうしてくれるんだコノヤロウ。

 

そして最後に、この作品では”おっぱい”がたくさん登場します。

 

決して卑猥なシーンなどはありません。決して。そもそもおっぱいと聞いただけでエッチだ卑猥だポルノグラフィティだというのは短絡的だと私は思います。おっぱいなんてただの脂肪のかたまりである。

 

しかしながらおっぱいという単語はマシンガンのようにたくさん出力されています。

 

おっぱいおっぱいおっぱいおっぱい。わけのわからなくなった彼らは敵を知り、己を知らば百戦危うからずの姿勢で、おっぱいを知り、おっぱいを目前にしたときの己を知るために、おっぱいへ立ち向かいます。何言ってんだとお思いになるでしょう。私もそう思っている。ただ、この作品とおっぱいは切っても切り離せない存在なのです。

 

ただ画面いっぱいに映るおっぱいを見て、アポロ11号を腰に携えた我々は月に行くことはできるのでしょうか。その答えがこの本にはないことだけは、確かです。

 

 

 

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