仁丹同盟を謳歌する。
中野を謳歌 第07回 仁丹同盟を謳歌する。
このブログはフィクションであり、筆者の妄想と夢で出来ている。真に受けたことによる一切の責任は負いかねるので悪しからず。
仁丹という単語を聞いたことがあるだろうか。
聞いたことがあるとすれば、おそらく30代以上の年齢の方たちからだろう。
聞いたことがない人には分かりやすい説明を。
仁丹とは、ルートビアもしくはタイガーバームのような香りを放つ生薬を銀箔で包んだ小さい粒状のサプリメント的なものである。サプリメントは的確な表現でないので、何かいい表現があればご教示願いたい。ちなみにこの粒は、お風呂のチェーンのつぶつぶより二周りくらい小さい。BB弾の方が分かりやすかったか。まぁいい。
別にここで仁丹の宣伝をしたい訳では無い。
私は、この仁丹の購入までで起きたいくつかのエピソードを書きたいのだ。では参る。
私は直近数ヶ月ほど、仁丹を探し歩いている。理由は単純。一度仁丹を食べてみたいからである。去年ほどから私の耳に入ってくる仁丹の二文字。画像検索しても現れるのはペリーみたいな謎の男と、銀色の粒々のみであった。幼少期より駄菓子屋でミンツを貪り食ってきた私は、大いに興味を惹かれた。一体どんな味がするのか。数多く書かれている効能は本当なのか。疑問は数多くあるが、解決法はただ一つ。この目で見、そして食うことだ。
まずは近所のドラッグストア。そもそも仁丹が置かれるのはどの区画なのかある程度の検討はついても確証はない。洗剤や化粧品の棚も含めた店内すべての棚を見回してもそれらしき商品はない。サプリメントのあたりが怪しいと思って三度見たが、仁丹は売っていなかった。
それからは長い道のりであった。出歩く先でドラッグストアがあれば立ち寄り、仁丹を探すついでにカロリーメイトの値段も見る。これの繰り返し。長い道のり過ぎて仁丹のことを忘れてすらいる時期があった。ちなみに、通販であれば気軽に手に入るのは調査済みである。何なら楽天市場で見つけたリンクを下記に記す。気になった方はポチってみるのもいいかもしれない。
そうして先日、仁丹との出会いは突然に訪れた。
コンビニで飲み物を買うと高いということで、昼に飲み物を買うときは近場のドラッグストアで買うようにしていた。コーラがすごく安い。そしてその日も何かしらの飲み物を買った。Suicaでピッとやって買うのは罪悪感が薄れるので金銭感覚がぶっ壊れるらしいが本当だろうか。私調べでは、買い物の無駄遣いより、電車バスの交通費で思わず残高が溶けていることが多い。出かけるのは良いが、交通費も念頭に入れないと大変なことになりますぞ。(実体験)
また話がそれたが、飲み物を買って店を出ようと踵を返したその時、外からの光を反射して目の前の棚が光った。その棚を見ると、驚くことに長い間探し求めていた仁丹があったのである。探しものは探すのをやめた時に出てくるとはこのことで、私はその時すっかり仁丹のことを忘れていた。思わず「ワァー!」と言って指を指してコサックダンスを踊りたかったが、店の通路が狭かったのでやめた。他の理由もある。
何より驚いたのがサイズである。手のひらくらいのサイズだと思っていたら、なんとSuicaよりも一回りほど小さかった。これは見つからないはずである。画像検索ではサイズ感が分からなかったのだ。
あいにくそのときは時間が迫ってきており、帰りにまた来るからその時まで待ってておくれと仁丹に告げ、一旦店からは離れた。それからの数分間は、口角が天に引っ張られてずっと微笑んでいる不審な人にならざるを得なかった。
夕方、帰り道にもう一度ドラッグストアへ入店。なぜか緊張して心臓が高鳴る。意味もなく店内をぐるぐるし、仁丹が置かれているレジの方へ向かう。目的の棚の目の前に立って、一度深い呼吸をし、仁丹を手に取り、滑らかな動きでレジへ差し出す。
レジの向こうからいつも元気な店員が「こんにちは!」と挨拶し、仁丹を受け取る。
店員はバーコードを読み取り、料金を確認すると、突然こう言い放った。
「今開けましょうか?」
セブンイレブンでブリトーを買ったときに言う「温めますか?」くらいのテンションだった。まるで開けて当然だよな? と言外に訴えているようでもあった。
ジンタニアン(仁丹をこよなく愛し、仁丹を広めることを生きがいとする人々のこと。また、仁丹依存症患者をさすこともある。)の間では仁丹を買ったらその場で開封すべきなのか? にわかジンタニアンの私は一瞬で悩み尽くし答える。
「……いや、開けなくていいです」
開けなくてよかったのかという疑問もあるが、開封は帰宅後の楽しみに取っておきたいのだ。すると、開けないと聞いて若干悲しそうな顔をしていた店員が突然胸ポケットに手を差し込みこう言った。
「僕も仁丹飲んでるんですよ! 容器もカラフルで綺麗でしょ?」
その言葉と共に胸ポケットから取り出されたるは青色の容器に入った仁丹だった。
驚き半分と何なんだこいつはという恐怖半分で口角が釣り上がる。なにか言ったほうがいいのかと思って口を動かす。
「あっそうっすか。」
めっちゃ興味なさそうな言葉がポロリと漏れてしまった。店員の表情も曇って仕舞うかと思いきや、
「よろしくお願いします!」
と朗らかに訴えてきた。なんだか可笑しくて仕方がなくて、私は笑いながら「はい」と答えることしかできなかった。店員の彼も笑いだして、二人で数秒笑いあう。
軽く挨拶を交わして店を出たあとも、ずっとあのちぐはぐな時間が面白くて5分に一回思い出し笑いをしてしまうことになってしまった。
てか、ジンタニアンってなんだ。
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